萩市編 桜ふぐ
山口県の各地域の新しい食、気になる食をレポート!! 第33回は萩市編です。
今回ご紹介するのは、萩市の「桜ふぐ」。皆さんは「桜ふぐ」という名前に聞き覚えはありますか? きっと初めて聞いた人も多いはず。「ふぐ」と付くからには、「フグ」の仲間に違いないこの「桜ふぐ」…。その正体や魅力について萩市水産課の椙本さんに聞いてきました!
「桜ふぐ」という名前を初めて耳にしたのですが、フグの一種で間違いありませんか?
はい、フグに間違いありません。「桜ふぐ」とは萩市の特産品「マフグ」の愛称で、今年度命名されたばかりです。なので、これからどんどん広まっていく名前です。
新しく誕生した「マフグ」の愛称なんですね! なぜそんな愛称を付けることにしたのですか?
萩沖産の天然ふぐ「マフグ」は2〜4月に最盛期を迎え、その頃のおいしさはトラフグにも負けないと言われています。しかし、トラフグに比べてまだまだ認知度が低いのが現実です。そこで、もっと多くの人に知ってもらえる方法がないかと漁師さんたちと話し合い、その結果、旬の季節が分かりやすく、しかも親しみやすい名前を付けてPRすることになりました。みんなで意見を出し合ったり、アンケート調査を行って、マフグの最盛期がちょうど桜の咲く時期と重なることから「桜ふぐ」と命名しました。
天然礁に恵まれた萩沖で揚がる地魚は約250種。萩市では、春夏秋冬いつでも旬の魚介が楽しめます
2〜4月が最盛期の萩市の特産品「マフグ」。2022年9月に「桜ふぐ」という愛称が誕生
なるほど、旬の季節が分かりやすく、しかも親しみやすい愛称です! それでは、「桜ふぐ」の特徴や魅力を教えてください。
「桜ふぐ」は、美しいあめ色の身と深いうまみ、独特の歯応えが特徴で、そのおいしさから「フグの女王」と称されることもあります。また、「フグの王様」と言われるトラフグが流通量の大半を養殖物が占めるのに比べ、「桜ふぐ」は全て天然物。しかも値段はトラフグより手に届きやすく、とても優秀な食材なんです。
それは素晴らしい! 萩市における「マフグ」の漁獲量はどれくらいなんですか?
「マフグ」は全国各地で漁獲されますが、日本一のフグ取扱量を誇る下関市の南泊(はえどまり)市場で水揚げされる「マフグ」の約7割が萩市越ヶ浜のはえ縄船団が漁獲したものです。多い時には1シーズン200トン近くを水揚げします。ちなみに、萩市の市場で水揚げされる「マフグ」は、萩沖を含む日本海西部で漁獲されたものです。
そんなにも!? 下関市のフグを支えているのは、実は萩市の漁師さんたちだったんですね。では、どうやって食べるのがおすすめですか?
市場に出回っている一般的なフグと同様に、刺身や寿司、ちり鍋、タタキ、唐揚げなどで味わうのが定番です。でも実は、現在、萩市では市内の飲食店の協力を得て、春限定で提供する「桜ふぐ」の特別メニューを開発中なんです!
なんと、それは完成が楽しみですね! メニューの開発にあたり、何か決まり事はあるのですか?
「桜ふぐ」をメイン食材とすること、未発表の料理であること、春や桜の彩りを表現した料理であることの3つの条件があります。今日は開発中の九つのメニューのうち、「桜ふぐ尽くし3種盛り」をぜひ試食していってください。
手毬寿司、茶わん蒸し、ふぐチリの三つの料理で「桜ふぐ」が味わえる「桜ふぐ尽くし3種盛り」
醤油は付けず、そのまま味わう「手毬寿司」。まんまるの形と梅酢で仕込んだ桜色のしゃりがかわいい!
おお! 寿司と茶わん蒸しとふぐチリと「桜ふぐ」を使った三つの料理が一度に楽しめるうれしい盛り合わせなんですね。この3種盛りをオーダーすれば、地酒がいくらでも進みそうです。
その通り! 地酒の肴(さかな)を意識した料理の盛り合わせです。萩市には六つの酒蔵がありますので、料理とともにぜひ飲み比べて欲しいですね。3種類の料理それぞれに合う地酒を探しながら楽しむのもおすすめです。
それでは向かって左の手毬(てまり)寿司から…。おいしい! 桜ふぐのうまみとやや弾力のある食感、それにピンク色をしたシャリとの相性が抜群ですね。あれ、シャリから梅の香りがするような…。
シャリをピンクに染めているのは梅酢です。ですから、酸味の中にほんのりと梅の香りが漂うんです。上にのっている「桜ふぐ」は、さばいた後にさらしを巻いて寝かせ、うまみを引き出しています。
ふっくらぷりぷりに揚がった「桜ふぐ」とチリソースが絶妙にマッチしたクセになる「ふぐチリ」
ダシをしっかり効かせながらも上品に仕上げた茶わん蒸し。具材は「桜ふぐ」の湯引きや「バイ貝」など
次は右側の「ふぐチリ」をいただきます! これは「桜ふぐ」のフリットでしょうか? ふっくらと揚がっていて、小ぶりなのに食べ応え十分ですね。ややピリッとした辛さと甘味がうまく合わさったチリソースが、淡白で上品な「桜ふぐ」ととても相性がいいです!
こちらは3月26日(日曜日)まで開催されている「
美味しい! 萩の地魚グルメキャンペーン」の特別メニュー「萩のウオチリ」でも絶賛されている特製のチリソースを使っています。とにかく魚と相性がよく、とっても好評なんですよ。「桜ふぐ」のうまみや食感を存分に引き立ててくれています。
萩の皆さんの「地魚をよりおいしく食べたい!」という思いが込められたソースなんですね。では、最後は真ん中の茶わん蒸しをいただきます。あれ? 表面に透き通った餡がかかっているように見えますが…。
「桜ふぐ」でとったダシがベースの餡ですよ。もちろん卵液にも魚介のダシを効かせていますが、こちらの上品な餡が全体をまろやかに調和しているんです。さらにトロッとした舌触りなので、食感もよりまろやかにしてくれます。
それでは一口。うわ〜…、上品でやさしい味わいですが、ダシのうまみがたまらないです。具材は「桜ふぐ」とシイタケ…、ん? コリコリとした食感のこれはなんでしょう?
萩市の見島沖に良質な漁場がある「バイ貝」です。都市部ではサザエよりも高級品なんですよ。「桜ふぐ」は湯引きを使用しています。
萩市の海の恵を詰め込んだぜいたくな茶わん蒸しなんですね! 「桜ふぐ尽くし3種盛り」以外にはどんな料理が登場するのでしょう?
では、もう二つほど紹介させてください。まずは「桜ふぐ御膳」です。
一目で春を感じさせる「桜ふぐ御膳」。刺身、唐揚げ、茶わん蒸しで「桜ふぐ」が堪能できます
桜の葉で香りを付けた「桜ふぐ」の刺身を、桜色の煎り酒で味わう。見た目も香りも春が満喫できる一品
桜色が散りばめられた、すごく春らしい御膳ですね! 「桜ふぐ」を使った料理は、刺身、唐揚げ、茶わん蒸しでしょうか? どれもおいしそう!
ありがとうございます。特に桜の塩漬け、梅で桜色に仕上げた煎り酒で味わう刺身は珍しいと思います。「桜ふぐ」の刺身自体も桜の葉で香り付けしているので、まさに春爛漫といった一品です。茶わん蒸しは、桜色をした道明寺粉を丸めたものの上に「桜ふぐ」をのせ、それを桜の葉で包んだものを具材にしています。周りの卵液と一緒に崩しながら食べるのですが、やさしい味は小さなお子さんにも喜んでもらえると思います。唐揚げは外はさっくり、中はふっくらジューシーに揚がっています。桜色のソースは赤大根がベースなんですよ。
本当にたくさんの工夫がなされているんですね。では、次のメニューをお願いします。
次はコースの一品として登場する「桜ふぐのフリットプッタネスカ」です。
コースの一品「桜ふぐのフリットプッタネスカ」。まるで芸術品のような美しい盛り付けも魅力
「桜ふぐ」のフリットに乾燥させた黒オリーブをまとわせ、アンチョビやパルミジャーノなどで味付け
うわ! これはまたオシャレな一品ですね! 撮影してSNSに投稿したくなっちゃいます!
熟成させた「桜ふぐ」を揚げたフリットは、肉のようなしっかりとした食感で、乾燥オリーブやアンチョビに負けないくらいの存在感があります。九つのメニューの中でも異彩を放つ、これまでになかった「桜ふぐ」料理ですね。「桜ふぐ」の新しい一面を知りたいという人にぜひ食べていただきたいです。
フグと聞けばどうしても刺身や唐揚げを想像しがちですが、こんなにもたくさんの料理に姿を変えるのですね。しかもどれもおいしそう! ところで、春限定とおっしゃっていましたが、具体的にはいつからいつまで味わえるのでしょう?
2月20日(月曜日)に「桜ふぐ」の旬宣言が出され、萩市内の飲食店9店舗で、2月21日(火曜日)から4月上旬にかけて提供します。この期間は「萩・椿まつり」や「萩城下の古き雛(ひな)たち」など萩市内では多彩なイベントも開催されます。ぜひ「桜ふぐ」と一緒に萩市の観光も楽しんでください。
また、実際に萩市に来られて「桜ふぐ」を食された方は、インスタグラムに写真と感想を投稿すれば抽選で「萩の桜ふぐ満ぷくセット」が当たる「
萩の桜ふぐキャンペーン」にもぜひご参加ください。刺身、唐揚げ、鍋用の「桜ふぐ」が付くぜいたくなセットですよ! ただし、投稿の際にはハッシュタグ「#桜ふぐ」を付けるのをお忘れなく。
今日は本当にありがとうございました! 「桜ふぐ」のおいしさがもっともっとたくさんの人に伝わるよう願っています!
【取材を終えて…】
今回の取材を通じて、萩市の皆さんがいかに「マフグ」に誇りを持っているのかを知ることができました。そして、愛称「桜ふぐ」を付けることで、そのおいしさを全国に伝えたい、「桜ふぐ」を通じて萩市をもっと盛り上げたいという思いがひしひしと伝わってきました。そんな萩市の人々の思いが届き、旬のシーズンにはトラフグに劣らないおいしさというこの「桜ふぐ」が、トラフグに並ぶ名品として多くの人に認知されることを願います。
ちなみにこの「桜ふぐ」、「マフグ」のほかに「ナメタ」という別名も持っています。萩市に巡業に来られたお相撲さんのちゃんこ鍋にマフグを入れたところ、鍋底に残ったつゆもなめ尽くすほど大絶賛。若い力士が食材を買いに行ったとき、「あのナメタをください」と言ったことからこの名前が生まれたとか、生まれなかったとか。萩市の漁師さんたちとお話しすると、このような面白い話がわんさか出てきますよ。