阿武町編 はじまりのレストラン かしま
山口県の各地域の新しい食、気になる食をレポート!! 第25回は阿武町編です。
今回ご紹介するのは、道の駅阿武町内にある、令和3年4月29日にオープンしたばかりの「はじまりのレストラン かしま」です。地元の食材をメインに使用し、「食」の面から阿武町の魅力を発信する、いわば「阿武町応援レストラン」として注目されています。
今日は店長の山本さんにこだわりや魅力をお聞きしながら、おすすめメニューをいただきました!
国道191号沿いにある道の駅阿武町。全国の道の駅発祥の駅の一つとしても知られています
道の駅裏には日本海と鹿島が織りなす絶景が! 夫婦円満を願う鐘とモニュメントは人気のパワースポット
道の駅阿武町は、全国道の駅発祥の駅の一つだと聞いています。「はじまりのレストラン」という名前は、それが由来ですか?
道の駅発祥の駅ということはもちろんですが、別の意味もあるんですよ。以前、この場所には別のテナントが入っていましたが、営業を終了されたので思い切って道の駅直営のレストランを開くことにしました。それで、初心に返って新たなチャレンジとして始めよう、原点に返ってより一層のおもてなしを始めようという二つの意味も込め、「はじまりのレストラン」と名付けました。「かしま」は、店内から望める男鹿島(おがしま)・女鹿島(めがしま)にちなんでいます。日本海に仲良く並ぶこの二つの無人島は「夫婦島(めおとじま)」とも呼ばれ、阿武町のシンボルなんですよ。
いろんな「はじまり」が込められている店名なのですね。では、レストランの特徴は何でしょう?
一番は地元産の新鮮食材をふんだんに使った料理です。物産直売所「あぶの旬館」を有する道の駅直営のレストランですから、素材の良さには自信があります。特に、魚は地元の網元からその日の朝捕れたものを仕入れるので鮮度は抜群です! 他にも、大きな窓から望む日本海の景色も自慢です。ぜひ見ていただきたいのは、晴れた日の夕景です。日中の青空も素晴らしいですが、水平線に沈んでいく太陽が空と雲、水面をオレンジに染める様子は、誰もが写真に収めたくなるほどの美しさです。
店内から見る日本海の夕景
夕日を背景にした夫婦島とモニュメント
聞けば聞くほど魅力的なレストランですね! 自然豊かな阿武町のいいところを集結させたイメージです。では、多彩なメニューの中でも阿武町のいろんなおいしさが一度に堪能できる「かしま御膳」について教えてください。
レストランの看板メニューにするために何度も試作を繰り返して開発した、刺身、天ぷらがメインの御膳です。メインの料理に加え、小鉢、茶わん蒸し、味噌汁、ご飯、デザートが付く、阿武町の海の幸、山の幸をふんだんに盛り込んだとっても欲張りな内容で、ボリュームも満点です。まずはお召し上がりください!
阿武町の旬が思う存分楽しめるぜいたくな「かしま御膳」
天ぷらは揚げたて熱々! タネはエビ、旬の地魚、地物野菜など
おお! これが「かしま御膳」ですね。ひと目でぜいたくとわかる華やかさ! どれから食べようか迷ってしまいます。が、熱々のうちにいただきたいので、まずは天ぷらから…。
衣の軽やかな食感に驚き! サックサクですね! 上品な味わいの衣をほどよくまとい、タネの個性を引き立てています。エビはプリプリ、ナスはトロトロジューシー、白身魚はふんわり…と、どれも絶妙な揚げ加減。タネが新鮮だからこそ実現できるおいしさでしょうか。
タネは地元産の新鮮な食材が中心で、どれも厳選したものばかりです。揚げたてを提供しているので、胃がもたれることなくサラッと食べられるはず。定食にプラスして天ぷら単品を注文し、ペロリと完食される方もいらっしゃいます。
天ぷら単品もあるんですね! それはいい注文の仕方を教わりました。さて、次は刺身をいただきますよ。見た目からも、箸で持ち上げたときの弾力からも新鮮なのが分かります。
刺身ももちろん、その日の朝に捕れた鮮度抜群の魚介を使います。ですから、提供する魚の種類は日によって変わり、そのときの旬のものをお楽しみいただけます。ちなみに本日は、サザエ、タイ、イサキ、スズキ、ヒラソです。どれも身が締まっておいしいですが、中でもサザエはおすすめです。コリコリの食感にきっと感動されると思いますよ。
刺身は5種類。その日の朝仕入れたものが並ぶため、何が味わえるのかは来てからのお楽しみ!
箸で持ち上げたときの弾力だけでわかる鮮度の高さ。艶やかな美しさもたまりません
では一口…。うわ! コリッコリです。磯の香りと噛むほどに感じる甘みはクセになりますね。こんなに鮮度の高いサザエが食べられるなんて、まさに感動です。タイやヒラソ、どの魚もおっしゃる通り、身が締まっていておいしいです。ここに来たら刺身は絶対に外せませんね。
ありがとうございます。でも、天ぷらと刺身以外の品も負けないくらいおいしいですよ。特に、当レストランの料理長はだしにとてもこだわっているので、味噌汁と茶わん蒸しは絶品です。「素材とだしが良ければ小細工は不要」、この考えが私たちの基本なので、だしには命をかけていると言ってもいいくらいです。
「小細工は不要」とは直球勝負ですね! 確かに、茶わん蒸しはだしが効いていて味わい深い。それに、卵液が適度に固まったふるふるの食感と、たっぷりの具材…、これはまた食べたくなる一品です。デザートも手作りなんですよね? 御膳を構成する全てから愛情を感じます!
それはうれしいお言葉です! もう一品、私こと店長が手作りする「無角和牛カレー」もいかがですか? 無角和牛を手軽に味わってもらうために開発した一皿です。
ええっ!? あの月に3頭しか出荷されない希少な「無角和牛」を使ったカレーがあるんですか? ぜひ味わいたいです!
「無角和牛カレー」は店長の手作り。トッピングの野菜で彩りも豊かに
無角和牛のうま味がたっぷり溶け出したルーは重厚感とコクが魅力
カレー専門店で出されるような濃厚さ、口に広がる複雑な香りと味わい、深いコク…、とってもおいしいじゃないですか! すごく丁寧に作られている印象を受けました。かなりの手間と時間がかかっているのでは?
普通の玉ねぎと新玉ねぎの2種類を別々に炒め、さらに炒める時間も変えています。両方の良さを最大限に引き出すために研究に研究を重ねた結果です。あとは、いろんな野菜をすりおろして加えています。実は、ある果実もすりおろし、あるスパイスも練り込んでいるのですが、これは企業秘密なので教えられません。無角和牛はカレー用とバラの2種類を入れています。カレー用は口の中でほろりと崩れるやわらかさに、バラは全部うま味となってルーに溶け込んでいるんですよ。「無角和牛カレー」も可能な限り地元の食材を使い、とにかく丁寧に、ただただ真摯に作っています。
それほどの手間をかけるからこそ完成する味なんですね。ところで、「かしま御膳」も「無角和牛カレー」もすごくお米がおいしいです。しっかり粒立っていて、ツヤツヤで、ほんのりと甘くて。お米も阿武町のものですか?
よくお分かりで! お米は地元・木与なぎさファームのヒノヒカリ「なぎさ米」を使っています。「やまぐちの棚田20選」にも選ばれた日本海を臨む風光明媚な棚田で育てられたお米で、ミネラルを含んだ海水の恩恵を受けて育つからこそのうま味なんです。
お米まで地元産とはさすがです! 自然豊かな阿武町だからこそ、とことんこだわれるんですね。道の駅阿武町は、道の駅発祥の駅であること、美しい海が眺められること、地元の素材にこだわった料理が楽しめることなど、たくさん魅力がありますね。
他にも日本海のパノラマビューを眺めながら入浴できる日本海温泉「鹿島の湯」や、25メートル、6コースの本格的な温水プール、隣には誕生したばかりの「ABUキャンプフィールド」と「食」以外の施設も充実しています。一体となって阿武町の魅力をもっともっと発信していきたいですね。
「やまぐちの棚田20選」にも選ばれた木与地区の棚田
道の駅阿武町温水プール。本格的なプールと幼児でも安心の小プールがあります
最後に、目標や今後の展望をお聞きしてもいいですか?
阿武町の食材、特に旬の地魚を使った新メニューを開発し、もっとたくさんのお客さまに喜んでいただきたいですね。近い将来、イカ漁が盛んな時期にはイカ尽くしの御膳、2〜3月には寒ブリ尽くしの御膳、やまぐちブランドに認定されているキジハタや、「やまぐちほろ酔いさば」を使った新メニューが登場するかもしれませんので、ぜひご期待ください。阿武町から世界中の人を笑顔にするつもりで、これからもおいしい料理を作り続けます!
本日はお忙しいところありがとうございました! 新メニューの誕生を心から楽しみにしています!
【取材を終えて…】
山本店長をはじめ、レストラン・道の駅のスタッフの皆さんの、「阿武町を盛り上げたい!」という熱い気持ち、そして、地元への誇りが感じられる取材となりました。話題の「ABUキャンプフィールド」もできたばかりですし、これから阿武町はさらに元気になることでしょう。
さて、今回は「かしま御膳」と「無角和牛カレー」を紹介しましたが、実は、店長が一番好きなのは「ほろ酔いさばの漬け丼」だそうです。「ほろ酔いさば」とは、酒粕入りの餌で養殖したサバのことで、山口県が2年以上かけて完成させたブランド魚です。特徴は、程よい脂乗りとうま味、青魚特有の臭いが抑えられているところだとか。この「ほろ酔いさば」は漬けにすることで、よりご飯との相性が良くなるため、丼で一度味わったら絶対にまた食べたくなるのだそうです。「時期的に今はないのよ〜」と店長は笑っていましたが…、悔しすぎる! 次の入荷は12月とのことなので、その頃にまた訪れます!