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表紙
タサン志麻さん
—— 巻頭インタビュー タサン志麻さんの名前

それぞれの家庭の家族構成や好みに応じて作る料理が評判を呼び、「予約が取れない伝説の家政婦」として注目されるタサン志麻さんは、山口県長門(ながと)市のご出身。
生まれ育ったまちのことや山口での思い出、日々の中で大切していることなどについてお聞きしました。

生まれ育ったのは海も山も温泉もあって
人も温かい、ぜいたくなまち

山口で育ったからこそ
今の私が存在している
—— 志麻さんが生まれ育った長門市はどんなまちですか?

海も山も、温泉もあって、食べ物がおいしい!人も温かく、すごくぜいたくなまちだと思います。高校卒業と同時に地元を離れましたが、いざ出てみたらものすごくいいまちだったんだと実感しました。

—— 志麻さんにとって山口県とはどんな存在でしょう?

私の「根っこの部分」を作った場所です。子どもの頃から、山で栗を拾ったり、野イチゴを摘んでジャムを作ったり、海で魚を釣ったり…。稲が育っていく様子も当たり前のように目にしていました。自然の中にあるたくさんの食に触れ、身近に感じられたからこそ、料理に興味が湧き、奥深さを知り、結果として今の私があります。

—— 山口県で思い出深い場所やお気に入りの場所はありますか?

地元の長門市だと、長門湯本温泉や「海上アルプス」とも呼ばれる青海島(おおみじま)には小さい頃からよく行っていました。秋には紅葉がきれいな大寧寺(たいねいじ)も、風情があって大好きです。「道の駅 センザキッチン」も、山口県の特産品がとにかく多彩にあって、帰省する際には必ず寄って、食材や東京へのお土産を買っています。道の駅が今立っている場所には、昔は飲食店やお土産屋さんが並んでいて、当時も友達と学校帰りに立ち寄るのがお決まりでした。それと、童謡詩人「金子みすゞ」の生誕地でもある仙崎地区も思い出深いです。私は金子みすゞが大好きで、仙崎駅から延びる「みすゞ通り」を今でも時々歩きます。彼女の人生をつづったドラマを何度も繰り返して見ましたし、衣装と同じ柄の着物を探し回ったことも。素朴だけど芯の強いところが好きで、東日本大震災の後、「こだまでしょうか」という詩がたくさんの人の心を勇気づけたと聞き、うれしく、誇らしく思いました。長門以外だったら、山口市にある山口県立美術館が思い出に残っています。両親がアート好きで、よく家族で出かけました。当時は連れて行かれていたっていう感覚でしたが、その時の経験が私の感性や発想にすごく影響を与えていたんだと今になって思います。料理も一つのアートですから、子どもの頃にいろいろな芸術に触れさせてもらえたことを、心から感謝しています。

タサン志麻さんの笑顔の写真

いつも家族そろって食事をするダイニングで山口県への思いを語る志麻さん

食卓を囲んで何気ない会話を楽しむ、
そんな時間を増やす手助けをしたい

—— 山口県の食べ物で、好きなものを教えてください。

長門市などで生産されている柑橘、果汁たっぷりの「長門ゆずきち」はいち推しです。鶏肉をソテーする時、フライパンに残った肉汁に果汁を絞り、バターやオリーブオイルを加えてフレンチソースにしたりします。お手軽に、うどんに入れてもおいしいです。サイズも小ぶりで、「ゆずきち」という名前もかわいいですよね。山口に住んでいたら、冷蔵庫に常備していたはず。あとは「はなっこりー」も。実は、はなっこりーは東京でも売っていて、形の美しさ、味わいともにレストランでも人気の食材です。帰省の際に必ず買って帰るのは、シソワカメ(しそで味付けしたワカメのふりかけ)とかまぼこ。シソワカメは子どもたちも大好きです。かまぼこは自分たちで食べるだけでなく、お世話になっている方々にも贈ります。皆さんすごく喜ばれるので、「山口のかまぼこはおいしいでしょう?」と、ついつい自慢しちゃいます。

—— 山口県の食材を使って作ってみたい料理はありますか?

山口県には新鮮でおいしい野菜や魚などがあり、たくさんの食材に恵まれています。山口の食材をもっとたくさん知って、山口の郷土料理になるような料理を作ってみたいです。生産地を見て回り、生産者の皆さんから直接お話を聞き、その食材を使う、そういった料理です。日々の暮らしの中で家庭で手軽に作れるような、万人に愛される料理が作れたら最高ですね。

—— 志麻さんが、日々の中で大切にしていることは何ですか?

食事をする時、テーブルにみんなで座って、家族と一緒に過ごすという「時間」を大切にしています。フランスに留学した時に、何を食べるかということや作る時間よりも、食べる時間や会話を大切にするフランスの文化が素敵だなと思ったので、日本の家庭にも広めたいと思っています。忙しかったら大皿料理一品でいいし、買ってきたお惣菜でもいい。大切なのは食事をしながら家族や友人と過ごすひとときです。簡単に作れるレシピなどを通じて、皆さんが家族で一緒に食卓を囲める時間を少しでも増やす手助けができたら、とてもうれしいです。

—— 最後に、未来を担う若者たちにメッセージをお願いします。

レストラン時代は、高級なフレンチを作りながら、家庭的な料理が好きなのにと、理想と現実の違いに苦しんでいました。でも、フレンチともフランスの食文化とも離れたくない、この思いをどこにぶつけたらいいんだろうと悩んでいました。最後には耐えきれなくなってレストランを離れ、「日本で暮らすフランス人の家庭で料理を作ろう」と。それが「家政婦」の始まりになり、今の私につながっています。大切なのは、苦しいなりにも自分でできることを探し、とにかく一生懸命やってみること。もし身動きが取れずに苦しんでいる方がいたら、「今できること」からやってみてください。苦しみも挑戦も努力も人生の糧となり、きっと未来を切り拓けるはずです。

タサン志麻さんの画像

山口県PR本部長「ちょるる」(左手)と山口県観光キャッチフレーズ「おいでませ ふくの国、山口」のシンボルマーク「ふくだるま」(右手)のぬいぐるみを持つタサン志麻さん。

センザキッチン

長門市仙崎の海辺にある道の駅「センザキッチン」。仙崎漁港直送の新鮮な魚介を中心に地元の特産品が揃い、県内外から多くの観光客が足を運ぶ人気のスポット。

大寧寺

長門市深川湯本にある「大寧寺」。境内は広く、春は桜、秋は紅葉の名所としても知られる。

はなっこりー

ブロッコリーと中国野菜のサイシンを掛け合わせて作られた、山口県オリジナルの野菜「はなっこりー」。クセがなく甘みのある味で、花から茎まで全て食べることができる。

長門ゆずきち

萩市(旧田万川町)原産の山口県オリジナル香酸柑橘「長門ゆずきち」。爽やかな香りとまろやかな酸味があり、果汁がたくさん絞れるのが特徴。

タサン志麻さんの好きな場所
周防大島
みすゞ通り(長門市)

「私と小鳥と鈴と」や「こだまでしょうか」などの代表作で知られる童謡詩人「金子みすゞ」。JR仙崎駅から北へ約1kmにわたって延びる通りは、金子みすゞの生誕地であることにちなんで「みすゞ通り」と名付けられており、「金子みすゞ記念館」や「金子みすゞブロンズ像」、仙崎の特産品であるかまぼこの板を使って作られたモザイク画などを楽しむことができる。

タサン 志麻
【Profile】
タサン 志麻(たさん しま)

1979年生まれ。山口県長門市出身。高校卒業後、大阪あべの・辻調理師専門学校、同グループ・フランス校で料理を学ぶ。フランスのミシュラン三ツ星レストランでの研修を修了し、帰国後は老舗フレンチレストランなどに約15年勤務。結婚を機に、フリーランスの家政婦に転身すると、各家庭の家族構成や好みに応じた料理が評判を呼び、「予約が取れない伝説の家政婦」として注目されるように。現在は家政婦の仕事に加え、料理イベントやセミナーの講師、地方の特産品を生かしたレシピ考案など多方面で活躍中。フレンチやフランスで学んだ「家族の食卓の温かさ」を現代の忙しい日本人に伝えるため、料理と向き合う日々を送る。

やまぐちめぐり

「世界を目指して」

山口県には、知的好奇心を満たす歴史や伝統、心を癒やす絶景や自然があふれています。
そんな数ある魅力的な観光スポットの中から、世界文化遺産とユネスコ世界ジオパークへの登録を目指している2つのスポットを紹介します。

プロフィール
錦帯橋

先人の夢と英知が創った未来への架け橋

錦帯橋タイトル

山口県を代表する観光スポット「錦帯橋」は、岩国市を流れる清流・錦川に架かる五連の木造橋です。アーチが描く美しい姿は「日本三名橋」の一つにも数えられ、豊かな自然を背景として、国の名勝にも指定されています。桁(けた)、楔(くさび)、梁(はり)、棟木(むなぎ)などの部材を組み合わせた「錦帯橋式アーチ構造」と呼ばれる独創的なアーチ構造は、先人たちの「流されない橋を造りたい」という情熱が生んだ、世界唯一のもの。1673年の創建より、架け替えや修復を繰り返す度にその時代の英知と技が結集され、錦帯橋は今日まで守り続けられています。創建以来350年、同じ場所、同じ姿で人々を魅了する美しさ、受け継がれた価値をさらに未来へと継承するべく、世界文化遺産登録を目指す取り組みが進められています。

周辺スポット
岩国城
展望台から眺める錦帯橋や岩国の城下町
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岩国城

山頂に立つ城の展望台から眺める錦帯橋や岩国の城下町は絶景で、晴れた日には瀬戸内海の島々までを一望できます。山頂へはロープウエーで片道約3分。ロープウエー山頂駅から城へは徒歩約10分。

岩国市観光交流所“本家松がね”
れんこんチップス
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岩国市観光交流所“本家 松がね”

江戸時代に建てられた商家をリノベーションした観光交流施設。有料で、岩国寿司やれんこんチップスといった特産品の試食や、地酒の試飲などができます。

錦帯橋の遊覧船
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錦帯橋の遊覧船

錦帯橋の周辺には桜や紅葉の名所があります。春には「さくら舟」、秋には「もみじ舟」など、季節ごとに異なる遊覧船が運行されており、川面から美しい橋の姿と城山や川周辺の景色を満喫できます。

岩国シロヘビの館
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岩国シロヘビの館

古くから岩国市に生息し、「神様の使い」として大切に保護されてきた国の天然記念物「岩国のシロヘビ」を鑑賞できる施設。その歴史や伝承、生態について楽しく学べます。

Mine秋吉台ジオパーク

3億5000万年前からの地球と生命の記憶をめぐる

Mine秋吉台ジオパークタイトル

国内最大級のカルスト台地「秋吉台」を中心に、市全域が「日本ジオパーク」に認定されています。貴重な地形や地質を作り出した地球のダイナミックさはもちろん、この地域特有の人々の暮らしを体感することができます。国内屈指の大鍾乳洞「秋芳洞」や、東大寺の大仏に使われている銅を産出した「長登銅山跡」、無煙炭を産出する「大嶺炭田」など見どころがたくさん。認定ジオガイドと一緒に見どころをめぐり、楽しみながら学べる「ジオツアー」に参加することができます。2024年10月には、日本ジオパーク委員会にて「ユネスコ世界ジオパーク」への推薦が決定。国内外での注目度がさらに高まっています。

秋吉台
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秋吉台

羊の群れのように白い石灰岩が露出する草原の絶景は圧巻。秋は草紅葉で一面が金色に染まります。トレッキングや「カルストロード」でのドライブやサイクリングもおすすめ。

秋芳洞
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秋芳洞

総延長11.2km超を誇る国内屈指の大鍾乳洞。約1㎞の観光コースには「百枚皿」「黄金柱」など、数万年をかけて造形された鍾乳石が連続。2024年12月30日から2025年1月3日までの期間中、鍾乳洞内がカラー照明と音響で彩られる「秋芳洞『光響ファンタジー』」が開催されます。

未公開エリアのケイビング(秋芳洞)
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未公開エリアのケイビング
(秋芳洞)

秋芳洞の未公開エリアを専門家と一緒に巡る洞窟探検ツアー。まだ整備されていない道や照明のない洞窟内を進み、岩肌を登ったりボートを漕いだりと、特別感あふれる体験ができます(2025年3月販売開始予定)。

秋吉台自然動物公園サファリランド
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秋吉台自然動物公園
サファリランド

車中から間近に観察する動物たちは迫力満点。スタッフの解説やエサやり体験付のバスの利用も人気です。「動物ふれあい広場」「キッズサファリ」など、家族で楽しめるスポットです。

休憩タイム
Mine秋吉台ジオパークセンター「Karstar (カルスター)」
Mine秋吉台ジオパークセンター「Karstar (カルスター)」

ジオパークの情報発信を行う観光案内所です。遊歩道マップの配布やレンタサイクルの受付を行うほか、カフェも併設。秋吉台の大パノラマを眺めながら休憩できます。

やまぐちめぐり

「ふく」の旅

山口県を代表するグルメ「ふぐ」。古くは、全国的に食べることが禁じられていました。明治時代、初代内閣総理大臣・伊藤博文が下関でふぐを食し、そのおいしさに感嘆。ふぐ食が解禁され、下関を中心に「山口といえばふぐ」が定着するようになりました。
今では、「ふく(福)」とも呼ばれ、幸福を招く縁起物として親しまれています。ここでは、そんな「ふく」にゆかりのスポットなどをご紹介します。

ふくの旅編プロフィール
下関ふく

まちぐるみで盛り上げる「下関ふく」

下関ふくタイトル

ふぐの取扱量日本一を誇り、日本で唯一ふぐを専門に取り扱う「南風泊(はえどまり)市場」が立地している下関。古くからふぐが親しまれてきた下関は、市内のあちらこちらにふぐのモニュメントやふぐの絵が描かれたマンホールがあるなど、ふぐを身近に感じられるまちです。
また、ふぐ食解禁の地である下関には、多くの専門業者が集まることで高い目利きとふぐ処理の技術が培われています。南風泊市場に集荷された国産の天然・養殖トラフグを、下関唐戸魚市場仲卸協同組合員が、独自の技術と方法で活かし込み及びみがき処理(除毒処理など)をしたものは、「下関ふく」として農林水産省の「GI(地理的表示)」に登録されています。

カモンワーフタイトル

食事処からスイーツまで、さまざまな飲食店や土産物店が立ち並ぶシーサイドモール。ふぐちょうちんやふぐのモニュメントなど、たくさんのふぐがお出迎えしてくれ、「ふぐ」を堪能できるお店も軒を連ねています。関門海峡を一望するロケーションを、海風を感じながら散策できる人気のスポットです。

カモンワーフ
ふぐちょうちん”
ふぐのオブジェ
唐戸市場タイトル

古くから「関門の台所」として親しまれている市場。週末や祝日などに開催されるイベント「活きいき馬関街」では、にぎり寿司やふぐ刺し、ふぐ汁などのふぐ料理はもちろん、さまざまな魚料理が味わえます。シンボルとなっている巨大なトフラグのオブジェは、地元大学生によって塗装がリニューアルされました。山口県の形をした模様にも注目です。

唐戸市場
トフラグのオブジェ
市立しものせき水族館「海響館」タイトル

ふぐの種類数は100種以上と世界一。国内最大級のペンギン展示施設「ペンギン村」や、イルカとアシカの共演ショーなど見どころ盛りだくさん(改修工事のため、2024年12月1日から2025年夏まで休館予定です)。

市立しものせき水族館「海響館」
トピック
まちじゅうにある「ふぐ」
まちじゅうにある「ふぐ」

ふぐの豊漁祈願が行われる亀山八幡宮に鎮座する巨大な銅像や、ふぐのイラストが描かれたマンホールのふたなど、まちじゅうにふぐをあしらったデザインがいっぱい。

萩と周南のふくタイトル

山口県では下関市以外にも、ふぐについて独自の文化が根付いています。

萩の真ふく

「ふぐの王様」と呼ばれる「とらふぐ」に対し、甘み豊かな味わいを持ち「ふぐの女王」とも呼ばれる「真ふぐ」。萩は日本有数の真ふぐの水揚げ量を誇ります。流通は天然もののみで、萩では「桜ふぐ」の愛称でPRに取り組んでいます。刺し身や海鮮丼はもちろん、さまざまな食べ方で楽しめます。

桜ふぐバーガー

桜ふぐバーガー

「道の駅 萩・さんさん三見(さんみ)」内にある食堂で期間限定で食べられる「桜ふぐバーガー」。

桜ふぐ
萩と周南のふくタイトル

周南市粭島(すくもじま)は、とらふぐの「はえ縄漁」発祥の地で、記念のモニュメントが建立されています。水揚げされるふぐは、旧市名にちなみ「徳山ふぐ」としてブランド化され、市内の料理店などでは一年を通してふぐが食べられます。ふぐ刺しはやや厚めに切り、一枚一枚じっくり旨みと歯ごたえを堪能するのが周南市流です。

はえ縄漁記念モニュメント
トピック
山口県内のスーパー
山口県内のスーパー

山口県を訪れたなら、スーパーの鮮魚コーナーにもご注目。「ふぐ刺し」や湯引きされた「ふぐ皮」が、身近に販売されています。

やまぐち暮らし

観光キャッチフレーズ「おいでませ ふくの国、山口」の下、『絶景』『体験』『グルメ』をテーマとしたさまざまな取り組みを進めています。

古地図を片手に、まちを歩こう。

古地図を片手に、まちを歩こう。

〜歴史ガイドウォークスタンプラリー〜

古地図を眺めながら、地元ガイドの案内で、城下町や宿場町などを散策できます。期間中、複数のガイドウォークに参加してスタンプを集めた方に、特製グッズをプレゼントします。

開催期間

令和7年3月まで

山口館の写真

東京で山口県が楽しめるアンテナショップ『おいでませ山口館』

外郎、日本酒、蒲鉾やふぐ加工品、瓦そばなど山口県の特産品を取り揃えています。

住所:東京都中央区日本橋2-3-4 日本橋プラザビル1階
営業時間:10:30~19:00 TEL:03-3231-1863

やまぐち食彩

自然豊かな山口県は多彩な海の幸、山の幸に恵まれ、
全国有数と評される「食の宝庫」です。
こうした魅力あふれる「食」について紹介します。

やまぐち食彩

山口県の地酒

海・川・山・里の幸が豊富で、古くから美食の文化が栄えてきた山口県。お酒も、さまざまな料理と楽しめるよう、米本来のおいしさや個性を追求する酒造りが行われており、蔵ごとに味の異なるこだわりの日本酒が楽しめる。

山口県の地酒
錦帯橋に由来するという名酒「五橋」
生み出したのは、錦川からの軟らかな伏流水と、
米・水・人にこだわった酒造り

山口県の東部を流れる、県を代表する清流・錦川。その川のほとりにある「酒井酒造」は、1871(明治4)年に創業。「酒造りの基本となる、『米・水・人』には、徹底的にこだわっています」と話すのは、6代目代表取締役社長の酒井秀希さん。

「原料となる米はすべて山口県産米。杜氏も蔵人も山口県出身。そして、仕込み水は錦川の伏流水です。カルシウムやマグネシウムの含有量が極めて低い超軟水のため、まろやかな口当たりになります。酒井酒造の酒は、そのすべてが地元に由来する、山口の気候風土が育んだ酒です。酒造りは米作りからと考え、2017年からは、農業生産法人『五橋農纏(ごきょうのうてん)』を立ち上げ、社員自ら米作りも行なっています」。

代表銘柄「五橋(ごきょう)」の名は、五連アーチが美しい『錦帯橋』に由来し、古くから地元の人々に親しまれてきました。1947年の全国新酒鑑評会で、硬水仕込みが全盛であった当時にあって軟水仕込みにより第1位を獲得。その名が全国に知れ渡るようになりました。

さらに、2023年と2024年の全国新酒鑑評会では、「五橋 大吟醸 西都(さいと)の雫」が2年連続で金賞を受賞。その特徴を伺いました。

「味わいは柔らかく上品で、高貴な吟醸香とキレの良い喉越しが特徴です。うまみが際立つ8~10℃前後に冷やして飲むのが最高で、山口の特産であるふぐ刺しとの相性は抜群。白身の薄造りやエビの刺し身といった品にもよく合いますよ。ワイングラスに注いで味わえば、華やかな香りが一層引き立ちます」。

その他のおすすめ銘柄を尋ねたところ、「ラベルの色で酒質や季節感を表現した『五(five)』シリーズもおすすめです。伝統的な木桶仕込み、生酛(きもと)造りにこだわりつつ、酵母や精米歩合、火入れの有無などを変えることで、異なる味わいを醸し出しています。手間暇かけた一本を、飲み比べてもらいたいです」と回答が。

「良い原料と、それを生かせる技、その両方がないと美味しい酒は造れない」と語る酒井さん。米・水・人、三位一体の思いで醸す「山口の酒」を、ぜひご賞味ください。

五橋 大吟醸 西都の雫の写真
全国新酒鑑評会で、2年連続で金賞を受賞した「五橋 大吟醸 西都の雫」。山口県が開発したオリジナル品種の酒米「西都の雫」を使用している。
木桶仕込みの写真
今では珍しくなった木桶仕込み。木桶での酒造りは温度管理が難しく、蔵人の熟練された高い技能が必要とされる。
酒井酒造株式会社代表取締役社長酒井 秀希さんの写真

酒井酒造株式会社 代表取締役社長酒井 秀希(さかい ひでき)さん

幼い頃から日本酒が身近にある環境で育つ。大学進学を機に上京。物産会社や運輸会社で経験を積み、2004年に酒井酒造に入社。2013年に代表取締役社長に就任。「日本酒文化を世界各地に広めたい」と、現在は海外進出も積極的に行っている。

島そだち(温州みかん)

山口県のブランドみかん「島そだち」。周防大島町で収穫されたみかんのうち、外観や糖度などの基準をクリアしたものだけを厳選。出荷時期によって、甘みと酸味の異なる味わいが楽しめる。本記事で紹介する「温州みかん」だけでなく、「ポンカン」や「いよかん」などほかの柑橘でも、一定の基準を満たしたものを「島そだち」としてブランド化し、高品質を保証している。

西京はも
太陽と潮風が育んだおいしさが凝縮
みかんの島の特別なブランドみかん

県の南東部、穏やかな瀬戸内海に浮かぶ周防大島町は、年間の平均気温が15.5度と温暖な気候。県内のみかん生産量の約85%を担う「みかんの島」として親しまれており、みかんの栽培が江戸時代から続いています。「島の傾斜地を利用した段々畑では、空からの太陽の光と海からの照り返しをたっぷり受けて、おいしいみかんが育ちます」と話すのは、周防大島町でみかん農家を営む勝丸大悟さん。

周防大島町では、見た目も味も高品質なみかんを生産してきましたが、より安定したおいしさのブランドみかんを作ろうと、美しい形状や糖度・酸度といった食味を正確に判別することができる光センサーを平成11年に導入。これにより、一定の基準をクリアして選び抜かれたブランドみかん「島そだち」が誕生しました。

勝丸さんは、島そだちのことを「ワンランク上の優等生みかん」と評します。「私の育てている『温州みかん』でいえば、島そだちとして出荷されるのは全体の収穫量のうちわずか2~3%、多いときでも8%程度です。希少性もあり、贈答用として購入いただくことも多く、そのおいしさはお墨付きです。オンライン販売も行っていますので、ぜひ味わってもらいたいです。加工品なら、島そだち果汁100%のジュースもおすすめです」。

島そだちは、9月下旬から2月中旬頃にかけて、極早生(ごくわせ)、早生、中生(なかて)・普通、高糖系の順にリレー形式で出荷され、味わいもそれぞれ異なります。極早生は糖度10.5度以上で、果肉が柔らかく爽やかな酸味が特徴。糖度11.0度以上の早生は、甘みと酸味のバランスが良好。糖度12.0度以上になる中生・普通は酸味が少なく、甘みが強くなります。晩生(おくて)の高糖系は、その名の通り13.0度以上の高い糖度。ほどよい酸味がありながらもしっかりと甘く、コクのある味わいを堪能できます。「私は甘みが少し増してくる早生が特に好きですが、どれも甲乙つけがたいおいしさで、出荷シーズンの間、味の移り変わりを満喫できるのも、島そだちの魅力です」と教えてくれた勝丸さん。太陽の光をいっぱいに浴びて育つ、島生まれの厳選ブランドみかんを、ぜひ味わってみてはいかがでしょうか。

島そだち(温州みかん)の果汁100%ストレートジュースの写真
貴重な島そだち(温州みかん)をぜいたくに使った果汁100%ストレートジュース。一つ一つ丁寧に皮をむき繊維質を残す独自の製法で作られ、濃厚な味わいが魅力。
摘果作業の写真
たくさんの果実から、傷のあるものやサイズの小さなものを落としていく摘果作業。残された果実へ養分を集めることで、おいしさがアップするそう。
みかん農家勝丸 大悟さんの写真

みかん農家 勝丸 大悟(かつまる だいご)さん

山口県立農業大学校で柑橘類の栽培技術や農業経営について学ぶ。卒業後は、周防大島町で研修を受け、2023年4月から就農。約1.5haの農地で「温州みかん」と山口県オリジナル柑橘の「せとみ」を中心に栽培を行う。高齢化が進んでいく中で、みかんの産地を守っていくことが目標。

やまぐちに暮らして思うこと

やまぐち暮らし

本州の西端に位置する山口県は、東京まで飛行機を利用すれば約1時間30分。
生活に必要なものは身近なところでひと通りそろう、心地よく、不便なく暮らせる「暮らしやすいまち」です。
さらに、さまざまな制度が充実し、起業するにも、子育てするにも最適。
ここからは、自ら「やまぐち暮らし」を選び起業の夢をかなえたり、憧れの仕事をしたり、
のびのびとした子育てをしたりと、充実の日々を実現している方をご紹介します。

case01

結婚を機に山口県へ移住。
40年以上続く梨農園を承継し、
子どもの頃から憧れていた農家に。

大切に育てられた梨農園を
思いごと引き継ぐと決意

香川県出身の金子雅人さんが移住したのは、山口市の北部に位置する阿東(あとう)地域。豊かな自然に恵まれ、農林業や畜産業が盛んな阿東には、リンゴや梨の観光農園が多くあります。金子さんは、結婚を機に、2021年に山口市に移住し、2年間の農業研修を経て、2023年に阿東地域の梨農園を承継しました。

「香川県と福岡県の遠距離恋愛だったので、婚約後、一緒に暮らすためには、どちらかが引っ越す必要がありました。どうせなら、子どもの頃から憧れていた農業がしたいと妻に打ち明けると、背中を押してくれ、移住就農イベントに参加することに。そこで山口市に事業承継を希望する梨農園があると知りました。果樹は新しく植えると収穫までに何年もかかるので、成木を引き継げるならありがたい。山口は二人の地元の中間あたりですし、気候も良くて災害の面も不安が少ない。農業の中でも、果樹を育てたいという気持ちがあったため、こんなチャンスはないと思いました」

決断に至るまでには、実際に梨農園を見学し、前の園主ともしっかりと話をしたのだとか。山口県の就農支援も後押しになったそうです。

「園主さんの人柄もとても良く、園主さんの思いごと梨農園を引き継ごうと決めました。移住して1年目は山口県立農業大学校で基礎的な知識や技術を学び、2年目は阿東地域の長門峡(ちょうもんきょう)梨組合を紹介いただいて現地研修を受けました。就農後3年間は経営安定に向けた支援があることも、移住の大きな決め手となりました。また、研修で出会った仲間たちとは、今でも情報交換をしています。一緒に頑張れるので、とても励みになっています」

承継した梨農園を「ペコッテファーム」と名付け、2回目の収穫を迎える金子さん。新たに240本の苗木を植えたり、新しい栽培方法にチャレンジしたりと奮闘しているそうです。梨農園の今後の目標についても伺いました。

「最近では、来てくださった方の喜ぶ顔が直接見られるようにしたいと思い、梨狩りも始めました。将来的には、ちょっとした食事が楽しめるカフェを設けたり…と、ここをもっと人が集まる場所にしたいです。そして、この地域で採れた『長門峡梨』のファンをもっと増やしていきたいですね」

第一子が誕生したばかりという金子さん。今の暮らしの様子と、今後の暮らしへの思いについて、聞いてみました。

「この梨農園があるのは、山々に囲まれた『しっかり田舎』の阿東。一方、住まいがあるのは、山口市の中心市街地にもほど近い宮野です。宮野は学校や病院、スーパーなど生活に必要なもの全てがコンパクトにまとまっているエリアで、言うなれば『ほど良い田舎』。都会のような派手さはありませんが、不便はありません。基本は便利な宮野で生活しながら、仕事やレジャーは静かで自然に囲まれた阿東という、二拠点生活をしています。子どもに、自然の中での体験をさせてあげたり、一緒に梨の収穫をしたりと…これからが楽しみです。それに、山口の皆さんはとても温かく、移住してきた私たちをいつも気にかけてくださいます。心強い味方がたくさんいますので、やっていけると思っています」

最近では阿東地域の消防団にも入団し、さらにネットワークが広がったという金子さん。長門峡梨を守る期待の若手として、すっかり地域になじんでいます。「事業承継も就農の一つの方法。山口には後継者を探している農家さんがいくつもあるので、移住就農をお考えの方にはおすすめです」と話すその表情からは、充実した山口暮らしを送っていることが伝わってきました。

作業場で商品に加工しているの写真
下関市豊田町の山の中の写真
金子さんが営む梨農園「ペコッテファーム」は、国の名勝「長門峡」から車で10分ほど。2024年春には、敷地を広げ新たな苗木を植えるなど、現在では約400本もの梨の木が育てられている。繁忙期には、前の園主さんやご近所の方々、香川県と福岡県から家族が来て、収穫などを手伝ってくれているそう。
薪ストーブの写真
山口県立農業大学校在籍中に、長門峡梨組合で現地研修を行う金子さんの様子。農業大学校では、農業を行うための基礎的な知識・技術、必要な資格・免許などを習得するための研修や、本人の希望に応じた受け入れ先での現地研修を受けることができる。
原木椎茸の写真
金子さんが丹精込めて育てた梨は、長門峡梨組合を経由して消費者の元へ。一部は山口市の道の駅「仁保(にほ)の郷(さと)」でも販売している。栽培しているのは幸水(こうすい)や豊水(ほうすい)、なつしずく、あきづきなど10品種と多彩で、販売期間は8月中旬から10月下旬まで。
インタビュー

金子 雅人(かねこ まさと)さん

金子 雅人さんの写真

香川県生まれ。2021年、結婚を機に勤めていた会社を退職して山口市に移住。2年間の農業研修を終え、2023年に山口市阿東地域の梨農園を事業承継し、「ペコッテファーム」を開園。農業における事業承継のモデルケースを目指して日々まい進中。


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のどかでほっこり温かい、
居心地よいこのまちに、
ずっと住み続けたい。

ゲストハウスオープンの
夢を叶えるために移住!

2019年に東京から山口県阿武町に移住した中村さん夫妻。移住の目的は夫婦二人の夢を叶えるためでした。

龍太郎さん 「東京では設計の仕事をしていて、食事も忘れるほどがむしゃらに働いていました。そんな中、一人旅でゲストハウスに泊まった時に、色々な方と出会い、こんな生き方があるんだ、と考えが一変することに。旅を繰り返すうちに、出会いの場であるゲストハウスを自分で開きたいと考えるようになりました」
千穂さん 「東京で仕事に追われる毎日を過ごしていた中で夫と出会い、ゲストハウスを開く夢を聞かされるうちに、私も憧れるようになりました」

そうして移住の地を探していた時に、お二人は阿武町と出会いました。

龍太郎さん「旅で知り合った方からの紹介で、地域と移住希望者とのマッチングを行う『移住ドラフト会議』というイベントに参加したのですが、それに阿武町の方も参加されていました。その後、縁あって、阿武町で古民家を改修しバーを併設されていた方から、ゲストハウスをしたいなら、この家を引き継がないかと言っていただき、それが移住の決め手になりました」
千穂さん「私は移住ドラフト会議の時から、ずっと阿武町が気になっていました。とにかく海がきれいで、のんびりとした雰囲気で。さらにこの家に一目惚れし、ここなら思い描いていた暮らしができそうとビビビッときました」

その後、お二人はそれぞれの職場を退職し、阿武町へ移住。龍太郎さんは地域おこし協力隊に着任しました。

龍太郎さん「任務は『まちの縁側づくり』。道の駅をまちの玄関とすると、私の任務は人が交流し、滞在できる場所を作ることでした。任期中はABUキャンプフィールドの施設整備やPRイベントの企画などを行いました。協力隊でなければ出会えなかった方もいて、活動を通じて多くの方と関われたことは、今でも大きな財産になっています」

協力隊の活動と並行して、念願のゲストハウス「えのん」を開いたお二人。それも束の間、予期せぬコロナ禍で休業を余儀なくされました。第一子の誕生もあり大変な中、どう乗り越えられたのでしょうか。

千穂さん「夫が在宅勤務が多かったこともあり、二人で育児ができていました。驚いたのは、阿武町の支援の手厚さ。妊娠中も出産後も、保健師さんや栄養士さんたちが訪問してくださり、出産後は毎月おむつを届けてくださるんです。保育園も、待機児童とは全く無縁でした。2人目の出産時には家族ですっかりまちの皆さんに認識されていたので、たくさんの方に祝福していただきました」

龍太郎さんが協力隊を卒業後、お二人は「nating design」を立ち上げ、デザインの仕事を、千穂さんは保健師の資格を生かし、町役場にも勤務。まちの一員として活躍されています。

龍太郎さん 「ここはとにかく居心地がよく、ずっと住み続けたいまち。満員電車に揺られることもないし、食べ物もおいしい。地域の方々に見守られながら、子どもものびのび育っています。移住のきっかけをくれたゲストハウスなど、私は出会いに救われてきました。今はデザインの仕事のほかにも、竹細工などの荒物を取り扱うお店も開いていますが、思いは一貫して、出会いやご縁を大切に、恩返しをすること。これからも形は変わるかもしれませんが、新しいご縁を繋いでいきたいと思っています」

優しい時間の流れるこのまちで、お二人はこれからも暮らしを紡いでいきます。

えのんの写真
東京では建築設計の仕事をしていた龍太郎さんは、引き継いだ古民家を自ら改修し、ゲストハウス「えのん(ENON)」に。「縁(EN)が繋がり、恩(ON)が循環する」という思いが込められている。
阿武町の竹細工の写真
数少ない職人の手で守られている阿武町の竹細工。技術を残し伝えていきたいと、師匠から習っている最中だそう。
「暮らしの荒物屋めぐる」の写真
さまざまな手仕事品を発信・販売する「暮らしの荒物屋めぐる」。龍太郎さんが作った品も並ぶ。
「ABUキャンプフィールド」のロゴデザイン
龍太郎さんが手がけた「ABUキャンプフィールド」のロゴデザイン。カラーリングは阿武町の「森・里・海」の魅力をイメージしたそう。
インタビュー

中村龍太郎(なかむら りゅうたろう)・千穂(ちほ)さん

細田 実さんの写真

2019年に東京から山口県阿武町に移住(龍太郎さんは栃木県、千穂さんは北海道出身)。龍太郎さんが地域おこし協力隊として活動する傍ら、ゲストハウス「えのん」を開く(2024年11月現在、休業中)。その後、デザイン広告などを手掛ける「nating design(ナティンデザイン)」を設立。2023年には、手仕事品を扱う「暮らしの荒物屋めぐる」も開業。千穂さんは非常勤の保健師として町役場にも勤務。

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