トップページ > 2023年1月27日 食レポ!! やまぐち
食レポ!! やまぐち

長門市編 365+1BEER

山口県の各地域の新しい食、気になる食をレポート!! 第32回は長門市編です。
今回ご紹介するのは、長門市初のクラフトビール醸造所「365+1BEER(サンロクロクビール)」です。2021年5月にタップルームを併設した醸造所がオープンし、長門湯本温泉の新たな名物として注目を集めているこのクラフトビール。その特徴や魅力、名称に込められた想い、そして、長門湯本温泉に醸造所をつくった理由など、開発者の有賀さんにお話を聞きに行ってきました!
取材をするきらりんのイラスト
醸造所がある長門湯本温泉はどんなまちですか?
山口県で最も古い温泉で、その歴史は約600年といわれています。長門湯本温泉は、ほんのり硫黄の香りがするアルカリ性単純温泉で、神経痛や筋肉痛、疲労回復などの効能があるとされ、地元の人たちにも観光客にも人気です。近年は未来に向かったまちづくりが進み、公衆浴場が新しくなったり、美しい竹林の階段が誕生したりと、とても活気づいています。
まち並みの写真

谷間にある小さな温泉郷で、温泉街の中央には音信川(おとずれがわ)が流れる

竹林の階段の写真

駐車場と温泉街をつなぐ、数百本の竹林に囲まれた「竹林の階段」は長門湯本温泉のシンボル

恩湯広場の写真

温泉街の中心部にある恩湯広場。芝生の上で食事をしたり、寝転んだりと過ごし方はそれぞれ

立ち寄り湯 恩湯の写真

老朽化していた伝統ある温泉施設をリニューアルした公衆浴場「立ち寄り湯 恩湯」

有賀さんは神奈川県ご出身と聞きましたが、長門湯本温泉との出会いは?
もともと都市計画を仕事としており、全国各地のプロジェクトに携わってきました。長門湯本温泉を訪れたきっかけも「長門湯本温泉まちづくりプロジェクト」に参加するためでした。仕事をしていくうちに、まち並みや風情、人の温かさに魅了され、いつの間にか大好きな場所になりました。派手さはありませんが、味わい深いところが気に入っています。
なるほど。ところで、なぜクラフトビールづくりをしようと思われたのですか?
以前から妻と「夫婦で何かやりたいね」と話しており、いろいろ意見を出し合った結果、共通の趣味であるクラフトビールをつくろうということになりました。そして、「せっかくつくるなら、人とのつながりもできた長門湯本温泉でやってみたい!」と、この長門湯本温泉で挑戦することを決めました。
店舗・醸造所の写真

店舗・醸造所は、私設資料館を併設した元薬局の建物をリノベーションしたもの

醸造所のタンクの写真

店舗奥にはクラフトビール製造用のタンクが。完成したビールはタップルームでも味わえる

タップの写真

ずらりと並ぶタップ。9種類を製造しているが、常時提供しているのは4〜5種類

「365+1BEER」の瓶の写真

瓶詰めした商品のかわいいラベルも人気の理由。カップでのテイクアウトも可能

では、名称を「365+1BEER(サンロクロクビール)」とした理由を教えてください。
「365」は地元に住む人たちの365日、つまり「地元の人たちの毎日」を意味します。そして、「+1」は長門を訪れる人たちの「特別な1日」を意味しています。二つを合わせ「365+1」とすることで、地元の人々にも長門を訪れてくれた人々にも愛されるビールにしたいという思いを込めました。クラフトビールは、都市部で飲まれることが多く、まだまだ地方では浸透していないのが現状です。でも、私たちは、地元のクラフトビールを地元の皆さんの日常に加えていただき、文化として定着させていきたいと思っています。
そんなすてきな理由があるんですね。それでは、「365+1BEER」が目指す味を教えてください。
基本的には自分たちの飲みたいビールを造っています(笑)。なので、素材は自分たちの造りたい味が出せるものにこだわっています。あとは、クラフトビールを飲んだことがない人が多いので、できるだけ幅広い味を造って提供するようにしています。
現在は何種類のクラフトビールを造っていらっしゃるのですか?
造っているのは9種類ですが、提供しているのはそのうちの4〜5種類で、時期によって異なります。割とスタンダードなものを常に6種類くらい造り、それにプラスして2カ月に1回くらい新しいものに挑戦するというスタイルです。今日は現在提供している中から、2種類を飲んでみてください!
ありがとうございます! それでは早速飲み比べてみます!
「夕暮れセゾン」の写真

すっきりとした飲み口が特徴の「夕暮れセゾン」。酸味と苦味が両方味わえる一杯

「初霜21/22」の写真

甘みがあって香りが高い限定醸造の「初霜21/22」。食事中よりも食後がおすすめだそう

まずは「夕暮れセゾン」から…。おお! 酸味も苦味もほどよくて、飲み口がすっきり! クラフトビール初心者におすすめの一杯ですね。これはどんなイメージでつくられたのですか?
ほんの少し涼しくなった夕暮れ時に飲みたい一杯として、さわやかな中にも酸味と苦味が感じられるような味を目指して、麦芽・ホップ・酵母の組み合わせを選びました。設備的にも試験醸造ができないので、毎回毎回真剣勝負で、私たち自身もどんな味に仕上がるのかが楽しみなんです。この「夕暮れセゾン」はイメージした味に仕上がっていると思います。
まさに夕暮れ時に堪能したい味わいです! それでは次に「初霜21/22」を飲んでみます! これは限定ビールなんですよね?
冬限定のビールとなります。だいたい12月の頭か中旬の初霜が降りるくらいに提供を開始するので「初霜」と名付けています。
では一口…。おお〜。こちらはやさしい甘みがあってやや重ための印象です。先ほどの「夕暮れセゾン」に比べ、香りも強い。この味わいはクセになりますね。クラフトビール通に一度は味わっていただきたい!
「夕暮れセゾン」よりは、どっしりとした味なので、食事中よりは、食後にまったりと楽しんでいただくのがおすすめです。香りもじっくり堪能してもらいたいですね。
こちらには「いつ来ても必ず置いているビール」というのはないんですよね?
常にあるビールというのは基本ありません。ただ、時期によって提供するビールの種類が変わるということは、何度足を運んでも飽きずに楽しんでいただけるということ。このタップルームの雰囲気を味わうためにもぜひ来ていただきたいですね。
店舗以外で「365+1BEER」が味わえる場所、購入できる場所を教えてください。
長門市をメインに、山口県内の飲食店や宿泊施設、酒屋で提供しています。県外での販売はごくわずかで、依頼があっても知り合い以外はお断りしています。
最初にお聞きしたコンセプトにそった販売方法ですね。できるだけ長門の皆さんに、そして、長門に訪れてくださった方に飲んでもらいたいという思いが伝わってきます。では最後に、今後の目標をお聞かせください。
まだまだ浸透していないので、まずは地元の方に「365+1BEER」の存在を知ってもらうことです。製造と卸しがメインなので、タップルームはたまにしか開けられないのですが、開けているときに寄ってくださる地元の方も少しずつですが増えています。こうして徐々に徐々にまちに根付いていけたらいいなと思っています。それと、造ってみたいビールが山ほどあるので、それに挑戦していきたいですね。
これからどんなビールが誕生するのか、今からとても楽しみです! 今日は貴重なお時間をありがとうございました。

【取材を終えて…】

長門市初のクラフトビール、絶品でした! 有賀さんにビールの魅力を尋ねたところ、「ビールは自由」という回答が。「クラフトビールの醸造はまるで実験」というように、毎回違う味に仕上がり、同じ味は二度と味わえないその面白さに、有賀さんはすっかり魅了されているようです。
さて、今回はタップルームで2種類を味わいましたが、しっかりと自分用のお土産も購入。生まれ変わった長門湯本温泉のそぞろ歩きのお供を務めていただきました。生まれ変わった公衆浴場や竹林の階段、カフェなど見どころ満載の長門湯本温泉。2023年2月19日(日)まで長門市出身の童謡詩人「金子みすゞ」の詩をテーマにした灯りイベント「音信川うたあかり」が実施されています。長門湯本温泉の特別な風景をぜひ「365+1BEER」を片手にお楽しみください。ドライバーの皆さんは、お土産として購入し、自宅に戻ってから楽しんでくださいね。