トップページ > 2022年12月23日 やまぐち体験部
やまぐち体験部

岩国市|篆刻体験

皆さんは、「山口県」といえば、何を思い浮かべますか? 「フグ」、「秋吉台」、「錦帯橋」…。
それだけ?! いやいや、山口県には他にも知ってもらいたい魅力が、各地域にたくさんあります!
第26回は岩国市で篆刻(てんこく)体験をしてきました!

酒井酒造美術館・五橋文庫外観の写真

酒井酒造美術館・五橋文庫

今回体験するのは錦帯橋の近くにある「酒井酒造美術館・五橋文庫」です。
篆刻とは、石に篆書(てんしょ)体で彫る刻印のこと。ここ五橋文庫では、錦帯橋と篆刻の意外な関係性と歴史を知ることができます!
篆刻の技術を日本に初めて伝えたとされるのが、中国・明(みん)から来た独立性易(どくりゅう しょうえき)禅師(ぜんじ)という人物。
当時の岩国領の領主吉川広嘉(きっかわ ひろよし)は、独立性易が持ち込んだ「西湖遊覧志(せいこゆうらんし)」の資料から錦帯橋創建のヒントを得たのです。

篆刻体験

印に刻まれた3種類の篆書体からなる「橋」の写真

錦帯橋の「橋」を彫ります

篆書体の辞典の写真

橋だけでも何通りもの形が!

体験では、印章を彫るための素材「印材(いんざい)」の1.2センチメートル四方の面に、好きな漢字(1文字または2文字)を彫ります。
まずは、事前に用意された篆書体の中から好きなものを選びます。
篆書体とは、漢字の原点といわれる文字のこと。漢字では一通りの形しかない文字でも、篆書体ではいくつもの形が存在します。その中から自由に選び、正方形の中に収めてデザインできるのが篆刻の良さなのだそう。
篆刻体験で使う道具の写真

印材を印床に固定するときは力を入れ過ぎないように(石が割れることがあるため)

印刀で印材を掘る様子の写真

印刀は、鉛筆の持ち方で字を書くように斜めに持ちます

彫るときは、印材を印床(いんしょう)に固定し、印刀(いんとう)で文字を一画ずつ彫っていきます。
まずは、印刀で文字の輪郭を切るように跡を付けます。
次に、切り跡から45度くらいの角度で石の内側に向かって少しだけ力を入れて彫り込み、断面が谷(Vの字カット)になるように彫り進めます。
小・中学校でやった、版画のような感覚。印材は柔らかい石なので、版画ほど力いっぱい彫る必要も、木くずで溢れることもありません。
彫り進めている様子の写真

向きを変えて、反対側からも同様に!

細かい部分に注意しながら彫っている様子の写真

「口」の部分は細かいので慎重に進めます

谷になった切り口を整えるように、先ほどより強い力で彫っていきます。印面の彫り跡の角を面取りするように少しずつ削っていくイメージです。この工程を何度か繰り返すことで、押したときの線が深く、太くなります。
基本的な篆刻のやり方は以上。彫ったときに出る粉をブラシで払いながら、これらを一画ずつ丁寧に繰り返します!
ブラシを使って粉を払っている様子の写真

ブラシを使って粉を払うことで彫りの深さも見えやすく!

「橋」の字を彫り終えて確認している様子の写真

いったん全ての線を彫り終えました

彫り終えたものがこちら!
表面だけ見ると、均一な太さで彫れているようにも見えますが…。しかし、先生は「実際に押してみないと分からないですよ。」と言います。
篆刻印の下書きを拭き取っている様子の写真

墨で書いた下書きをしっかり拭き取ります

印泥の写真

印泥(いんでい)。朱肉と違い、鮮明さ、色の深み、変色やにじみの少なさが特徴

印泥(いんでい)に印面を10回くらい叩くようにして付けて、紙に思いっきり押し込みます。
ゆっくり紙から離してみると…。
一番最初に押した「橋」の字の写真

全体的に線の太さが気になります

サンドペーパーで表面を削った際の粉をブラシで落としている様子の写真

サンドペーパーで表面を軽くこすり、ブラシで粉を払います

うーん。
押して見てみると、線の太さにムラがあるのが分かります。
線が少し太すぎたので、全体的に細くしたい…。そんなときは、サンドペーパーで彫りすぎた面をすり減らすことで、線を細くすることができます!
先生が押した「橋」の字の写真

下が修正後のもの。線も細くなっていますが、先生が押した印はとても鮮明!

太さを修正するために再度彫っている様子の写真

鏡文字になっていることに注意しながら、彫り足します(補刀)

全体の線が細くなりました!
気になるところを削って、全体の線の太さが均一になるように整えていきます。
紙に押された文字を見ながら修正する位置を確認します。文字が反転していることを忘れないように、きちんと意識しながら…。
ハンコを押している様子の写真

ハンコを押すのも技術が必要…

修正後に押した「橋」の字の写真

いい感じに整えることができました!

これで完成!
修正を重ね、しっかり作り込んでしまったため、1時間弱かかってしまいました…。
ほとんどのお客さんは、入館から完成まで大体30分程度かかるそう。貴重な体験ですが、手軽に楽しめるところが良いですね!
完成した篆刻印と紙の写真

紙には何度も修正した形跡が…

持ち帰るために袋に入れた篆刻印と押した紙の写真

作った篆刻印は持ち帰ることができます

作業中は篆刻にまつわる歴史や、この施設を立ち上げるまでのお話を聞くことができます。
ぱっと見は小さなはんこ。ただ押すだけのものでも、歴史や由来を知ることで、その世界の奥深さに気付かされました!

酒井酒造美術館・五橋文庫のご紹介

酒井酒造美術館・五橋文庫の内観の写真

酒井酒造美術館・五橋文庫の内観

酒井酒造美術館・五橋文庫は、明治4年に創業した老舗酒蔵「酒井酒造」の美術館です。文化芸術に深い造詣を持った酒井酒造の3代当主が残した多くの美術品と5代目のコレクション、そして陶芸家の小林東五(こばやし とうご)氏からの寄贈品が展示されています。
青田石(せいでんせき)に彫られた篆刻印の写真

数々の篆刻印が展示されています

五橋の酒ラベルに使用された篆刻の写真

五橋の酒ラベルに使われたものも!

館内には、篆刻の元となった漢代の銅印や、元々は印を入れる小型の重箱から変化したと言われる印籠(いんろう)、侍が薬を入れて身に付けていた印籠といった実物展示を見ながら篆刻印の歴史を詳しく学ぶことができるほか、お酒のラベルに使用された篆刻のデザインも展示されています。
吉香公園の写真

吉香公園

錦帯橋の写真

錦帯橋

五橋文庫は、吉香(きっこう)公園や岩国城、錦帯橋の近くにあります。
観光だけでなく、足を休めながらの思い出作りにもピッタリ!

今回体験した場所はこちら!

酒井酒造美術館・五橋文庫の地図
体験料大人2,500円から(体験料・入館料含む) ※要予約
住所岩国市横山2丁目4-32
TEL0827-28-5959
FAX0827-28-5960
体験時間10時から16時まで(開館時間は9時から17時まで)
定休日毎週水曜日・展示替え時と出張などにより臨時休館あり
駐車場なし ※錦帯橋付近の駐車場をご利用ください。
アクセス山陽自動車道 岩国ICから車で約10分
トイレなし ※近所に公衆トイレあり