トップページ > 2022年11月25日 食レポ!! やまぐち
食レポ!! やまぐち

周南市編 鹿野和紅茶 和(なごみ)

山口県の各地域の新しい食、気になる食をレポート!! 第30回は周南市編です。
今回ご紹介するのは、周南市の最北部にある鹿野地区で生産される紅茶「鹿野和紅茶 和(なごみ)」です。皆さんは、昭和初期に鹿野地区で8トンものお茶が生産されていたのをご存じですか? 「鹿野和紅茶 和」は、そんな鹿野地区のお茶文化の復興を目指し、開発された紅茶なのだそうです。
それでは早速、開発者の一人、かの高原開発の竹本さんに「鹿野和紅茶 和」についてお聞きしてきます!
取材をするきらりんのイラスト
鹿野地区では、昭和初期に8トンものお茶を生産していたと聞きました。
おっしゃる通り、昭和初期には乾燥した状態で8トンものお茶が生産されていました。現在はほとんどが自家消費用となっていますが、今でも田植えが終わる時期には茶摘みの様子が鹿野のあちこちで見られますよ。皆さん、手摘み、手揉み、釜いり、天日干しといった昔ながらの製法でお茶を作っておられます。
なるほど、生産量は減っても技術は脈々と受け継がれてきたんですね。ところで、鹿野茶の歴史は古いんですか?
鹿野地区でお茶の栽培が始まったのは室町時代のことで、鹿野茶は全国でも有数の古い歴史があるお茶とされています。漢陽寺を開山した用堂明機禅師(ようどうみょうきぜんじ)が中国から持ち込んだのが始まりだそうで、山口県におけるお茶の栽培の起源とも言われています。江戸時代には、藩主の飲用茶に長年用命され、江戸に送られる献上品にもなっていたんですよ。
鹿野の風景の写真

周南市の最北部、島根県との県境に接する鹿野は高原のまち。豊かな自然が魅力

茶畑の写真

庭先や道路沿いの生垣(いけがき)、畑の片隅など、鹿野のいたるところにお茶の木が

鹿野はそんなに古い歴史のあるお茶所なんですね! では、「鹿野和紅茶 和」の開発に至った経緯は?
せっかくの鹿野の資源「鹿野茶」をうまく活用できていないことが、とてももったいないと思ったからです。どうにかして鹿野のお茶文化を復興したい、おいしい鹿野茶をお届けすることで一人でも多くの人を笑顔にしたい、鹿野茶のおいしさを発信することで鹿野を盛り上げたい、元気にしたいという思いから、「鹿野和紅茶 和」を開発することにしたんです。でも純粋に「鹿野茶を紅茶にしたら、どんな味になるんだろう?」という冒険心もありました。
完成するまでの道のりはいかがでしたか? 苦労した点などを教えてください。
最初の一年は、紅茶やお茶のことをよく知っている方々に話を聞いて回り、集めた情報をもとに自分たちにできることを考えていきました。現在の鹿野でのお茶づくりは、自家消費用なので基本的には全ての工程が手作業です。でも実際に試作し、商品化を目指していく中で、手揉みでは生産量に限界があるという壁にぶつかりました。
確かに、商品にするとなると、ある程度の量は必要になりますね。
話し合った結果、お茶の葉を揉む作業を機械化しようと柔捻(じゅうねん)機の導入を決めたのですが、機械が設置されるまでに一年の月日を要しました。その間はみんなで一生懸命手揉みしましたが、大変でしたね(笑)。また、現在の茶葉の冷凍技術を習得するまでは、摘み取った茶葉を即柔捻しないといけなかったので、茶摘みの季節は目の回るような忙しさでした。しかも、コロナ禍の影響で茶葉を摘んでくださる方も少なく、茶葉を集めること自体に苦労しましたね。
柔捻機の写真

生産量アップのために導入した柔捻機。機械まかせにはせず、人の目で品質をしっかりチェック!

茶葉を手作業で袋詰めする様子の写真

完成した茶葉は全て手作業で袋詰め。ここでも目を凝らして茶葉をより分けるこだわりよう

そんな苦労があったんですね! 生産するうえでのこだわりはありますか?
一番のこだわりは、完全手摘みによる収穫です。しかも、自分たちで摘むだけでなく、鹿野にお住まいの高齢者の方々にも声をかけ、ご自宅にあるお茶の木から摘んだものを買い取らせていただいています。つまり、「地域みんなによる手摘み」なんです。もちろん、手摘み自体にもメリットはあります。注意深く観察しながら人の手で新芽を摘みますので、古葉や木茎の混入はほとんどありません。芽の長さも大体揃いますから、見た目の要素としても品質が高まるんです。また、パッケージ作業は、鹿野にある障がい者就労支援施設の通所者の皆さんに行っていただいています。このように「鹿野和紅茶 和」を通じて、鹿野で暮らすさまざまな方の生きがいや雇用の創出、農福連携の仕組みづくりを行い、微力ながら地域経済の循環を図っています。「和」という商品名には、「農福連携や鹿野地域にお住まいの方々と一緒に協力して」という意味を込めているんですよ。
「鹿野和紅茶 和」は地域に住むたくさんの方々が関わっている紅茶なんですね。では、その魅力を教えてください。
なんといっても「香り」です。鹿野茶の特徴である香りが紅茶にも生かされ、皆さんが日頃飲まれている紅茶とはひと味違った独特の良い香りが楽しめます。それと、ほんのりと甘く、まろやかな味わいですね。和食にも洋食にも合うんですよ!
おお、それは期待大です! 早速いただきたいのですが、入れ方に何かポイントはありますか?
ティーバッグをカップに入れ、沸騰した湯を注ぎ3分ほど蒸らします。その際、カップにふたをしておくと、さらに香りを楽しむことができますよ。3分経ったらティーバッグのタグをつまみ、数回揺らしてから取り出してくださいね。
ご指導ありがとうございます! ではパッケージを開封して…。
パッケージングされた「鹿野和紅茶 和」の写真

パッケージは、手に取ってもらいやすいよう、やさしくかわいい色合いに

紅茶を入れている様子の写真

湯を注ぐと紅茶の良い香りがぶわっと広がる。3分の待ち時間すらも楽しめる一杯

うわ! 取り出した時点でいい香りがしますよ。湯を注ぐと…、おお! やさしい香りが一帯を包み込むようです。
あ、そろそろ3分ですね。どうぞ飲んでみてください。
まずは一口…。あ、これまで飲んできた紅茶と全く印象が違います。確かに香りが独特。やわらかい飲み口で、「まろやか」という表現がぴったりです。飲み込んだ後に残る余韻もいいですね。一瞬渋みを感じさせますが、スッと引いた後にさわやかさがあり、奥深さが感じられます。和食にも洋食にもよく合うという理由がわかります。でも、これは単体でも十分満足できる、「主役」の紅茶ですよ!
琥珀色の紅茶の写真

美しい琥珀(こはく)色。口の中にふんわりと広がる独特な香り、渋みの後のスッキリ感はやみつきに

山口県産レモンを添えたアイスティーの写真

アイスティーも絶品! この日浮かべたのは、輪切りにした山口県産レモン

次はアイスティーでいただきます! 氷を入れる分、少し濃い目に入れますね。輪切りにしたレモンを浮かべて…。おいしい! 冷やしても香り高い! 飲みごたえのあるアイスティーです。
ありがとうございます。ユズの輪切りもおすすめですよ。
そうなんですね! 今度はぜひユズで挑戦してみます。他におすすめの飲み方はありますか?
ストレートでお飲みいただくのが一番ですが、好きなようにアレンジして楽しむのもいいと思いますよ。
なるほど…。では、いくつか試してみます!
 
紅茶にアプリコットジャムを入れる様子の写真

アプリコットジャムを入れてフルーティーさをプラスしたホットジャムティー

ジンジャーホットティーの写真

すりおろしショウガとハチミツを入れたジンジャーホットティー。寒い日におすすめ

結構たっぷりのアプリコットジャムやショウガを入れましたが、しっかりと紅茶の香り、奥深さが味わえます。むしろ引き立っているような感覚です。これほどの安定感があれば、いろんなアレンジメニューへの挑戦も楽しみになりますね! 茶葉をシフォンケーキやクッキーに使ってもいいかも。ところで、「鹿野和紅茶 和」はどちらで購入できますか?
現在「鹿野和紅茶 和」は、JA周南の販売店、道の駅「ソレーネ周南」、ふるさとマルシェかの、石船温泉、せせらぎ・豊鹿里(ゆかり)パークで販売しています。周南市のふるさと納税の返礼品にもなっていますよ。
最後に、今後の目標をお聞きしてもいいですか?
まずはやっぱり鹿野茶の復活と鹿野のお茶文化の復興です。そのためには、引き続き研究を重ね、さらなる品質の向上を目指します。より効率的な収穫方法を確立し、生産量ももっともっと増やしたいですね! かつて江戸への献上品として知られていた鹿野茶の名前を、再び全国に轟かせられたら本望です。
今日は貴重なお時間をいただき、本当にありがとうございます。鹿野茶、「鹿野和紅茶 和」で鹿野地域がもっともっと元気になることを祈っています!

【取材を終えて…】

周南市鹿野地区は、1,000メートル級の山々に囲まれた自然豊かでのどかな地域。清流とともにゆったりと流れる時間、四季折々の景色、動植物とのふれあいが魅力です。そして、そこに暮らすのもおおらかで温かで、魅力的な人たちばかり。そんな鹿野の人々が手を取り合って開発した「鹿野和紅茶 和」には、「鹿野の特産品だから、鹿野で全て作りたい!」という情熱も込められています。その情熱に支えられ、「鹿野和紅茶 和」は歩み始めたばかり。この和食にも洋食にも合う和紅茶が、「食後のコーヒー」ではなく、「食後の紅茶」の文化を築くのではないかと、密かに期待しています。