トップページ > 2022年6月24日 やまぐち体験部
やまぐち体験部

防府市|鋳造体験

皆さんは、「山口県」といえば、何を思い浮かべますか? 「フグ」、「秋吉台」、「錦帯橋」…。
それだけ?! いやいや、山口県には他にも知ってもらいたい魅力が、各地域にたくさんあります!
第20回は防府市で鋳造(ちゅうぞう)体験をしてきました!

長州鋳物記念館外観の写真

長州鋳物記念館

今回体験するのは防府市にある長州鋳物記念館です。かつて産業として栄えていた防府市の鋳造業は衰退の一途をたどり、鋳造業の多くは鉄工業へ業種変更や、海外工場ヘ移行、閉鎖となりました。それを復活させたものが、長州鋳物記念館です。では一体、鋳物とはなんなのか…鋳物と言われても、銀色の器やマンホールのふたなどをイメージする方が多いのではないでしょうか?実は、防府市民にはおなじみの防府駅前にあるオブジェも鋳物なんです! それらは景観鋳物と呼ばれ、防府市内にはさまざまな景観鋳物が点在しています。

鋳造体験

鋳物とは、加熱して溶かした金属を作りたいものと同じ形の空洞部を持つ型に流し込み、冷やして固める加工法で作られる製品です。鋳物素材には鉄合金、アルミニウム合金など種々ありますが、長州鋳物記念館では金属の中でもスズが使用されています。
スズは熱伝導率が良いことに加えてイオン効果・抗菌効果が高いため、スズ製のコップやおちょこであれば、お酒がまろやかになるとも言われ、熱燗や冷酒の良さを損なわずに楽しめます。
施設内の工房の写真

施設内の工房

現在は事前予約制で、作るものは当日に選びます。基本的に用意されたメニューの中から選びますが、リクエストによってはメニューにないものも作れるかも!
今回は防府天満宮の天神様にあやかって梅の小皿を作ることにしました。
体験者がエプロンを着用した様子の写真

熱々のスズが飛び散るかもしれないのでエプロンを着けます

スズの入った鍋の写真

空っぽの鍋のように見えます

まずは鍋を熱してスズを溶かします。
あらかじめ鍋の中にスズが入っているのですが、パッと見ただけでは鍋と同化していてよく分かりません。
これは透明なのか?それとも鍋の内側が反射しているのか?見慣れないスズの実態に困惑してしまいます。
スズはかつて鏡としても普及していたそう。「のぞいてみますか?」と聞かれ、火を止めた後に中をのぞいて見ると…。
体験者が鍋をのぞき込む様子の写真

安全に配慮してのぞかせてもらいました

スズ人形の写真

手足を自由に曲げられるスズ人形は子供たちの人気者

すごい! たしかに鏡みたいに反射していました。
融点に達するまで待つこと5分。鍋の外側から中心にかけてどんどん溶けていく様子は不思議と見入ってしまいます。
完全に液体になったら、型にスズを流し込みます。
鋳造というと砂型を使用するイメージがあったのですが、素人には難しいので。こちらでは用意されたシリコンの型を使います。
型に流し込む前に、失敗してしまわないよう事前にすくって流し込む練習をします。
液体状のスズは水のようにさらさらで軽そうですが、すくい上げようとすると…。
鍋の中の溶けたスズをすくい上げる様子の写真

すくってみるとぐっとスズの重みが!

思うように上がらない…。
これは練習しないと失敗してしまいそう。何度か繰り返し、慣れてきたら流し込んでいきます!
何よりも注意すべきポイントは「途中で止めないこと」。途中で勢いが変化すると中の温度も変化してしまい、それによって発生する湯境(ゆざかい)がヒビの原因となってしまいます。
失敗しても、また溶かせば何度でも作り直せるのがスズの良さですが、ここは一発で決めたいところ!
シリコンの型の写真

シリコンの型は従来の砂型と違い、壊れる心配もないので安心です

スズを型に流し込む様子の写真

流れを止めないで一気に流し込みます

湯道(ゆみち)に意識を集中して流し込み…するとほんの数秒で溢れそうに!
タンブラーなど大きいものだともっと時間はかかるそうです。
型から取り外して水にサッと通せば、一瞬で触れるほどの温度に。
余分な部分を削り取ると、きれいな梅の花ができました。
金やすりで余分な部分を削り取る様子の写真

金やすりで勢いよく削り取ります

皿に施された梅の花の写真

内側にも梅の花が施してあってかわいいです!

できたての鋳物は、小さな凹凸があって、これはこれでいい感じ!
しかし、まだ側面が荒く、触ると引っかかってしまうため、やすりがけをして引っかかる部分を削り取っていき…軽く触って引っかかりがなくなったら、いよいよ小皿らしい形に整えていきます。
皿状に湾曲させるためハンマーでたたく様子の写真

外に向かって軽くたたきます

底部を平らに成型するためにハンマーと棒でたたく様子の写真

真ん中を見つけるのは意外と難しい…

円形の土台に置いて、土台に沿うように上からハンマーで軽くたたきます。
このままでは置いたときにぐらついてしまうので、安定させるために底になる部分を一発たたいたら形が完成!
形が整った小皿の写真

どこからどう見ても小皿の形に

皿の表側に紙やすりをかける様子の写真

表側だけやすりがけします

仕上げに、お好みで紙やすりを使って光沢を出していきます。表面が傷つかないように、紙やすりは水で濡らして使うのがポイント。こだわり始めると次は時間との戦いに…良い感じになったところで切り上げます。
体験者の指先が黒くなった様子の写真

やすりがけの痕跡か、指先が真っ黒に!

テーブルに置いた小皿の写真

銀色が店内の雰囲気とぴったり

梅小皿の完成です! やすりがけをすることで、より一層光沢が増してきれいになりました。ちょっとしたお菓子やアクセサリー置きにもちょうどいいサイズで、これからいろんな場面で活躍しそう。
現代ではSDGsや3Rなど環境に優しい取り組みが推進される中、壊れても再度作り直すことができる鋳物はまさにエコそのもの! 鋳造業は、もっとも地球に貢献している産業とも言えるのではないでしょうか。

長州鋳物記念館のご紹介

長州鋳物記念館は、防府市ふるさと納税クラウドファンディング「KAIKA」の支援を経て2020年4月に防府天満宮にあった古民家をリノベーションしてオープンしました。また、開店の際には改装と商品開発を防府商工高校の生徒が協力し、地域一同が支え合って「鋳物の町 防府」を現代によみがえらせています。
日本の伝統文化でもあり、かつて国衙(こくが)も置かれるほど防府の町を発展させた鋳造業。ここ長州鋳物記念館では、江戸時代から続くその伝統美を間近で見て体験することができます。
また、11月上旬に「天神ふいご祭り」が開催されます。イベント当日は今回のように鋳造体験を楽しむこともできます。
ストラップ「合格まんほーる」の写真

受験シーズンには飛ぶように売れるという縁起の良いストラップ「合格まんほーる」

記念館の庭にあるマンホールのふたの写真

記念館の外にはここで作られたマンホールのふたが!

体験で作ることができる鋳物のサンプルの写真

体験で作ることができる鋳物のサンプル

スズ製のアマビエの写真

防府商工の生徒と共同開発したスズのアマビエ(人気により品切れ中!)

周辺施設のご紹介

麓から見える防府天満宮の楼門の写真

麓から見える防府天満宮の楼門(ろうもん)

防府天満宮の楼門の写真

間近で見ると迫力があります!

防府天満宮は、全国に約1万2千社ある菅原道真公を祭る「天神様(天満宮)」のうち、日本で一番最初に創建されたとされ、受験シーズンには多くの学生が合格祈願のために訪れます。その知名度は、北野天満宮(京都)、太宰府天満宮(福岡)と並び日本三天神とも呼ばれるほど。西日本屈指の荒祭「御神幸祭 裸坊祭(ごじんこうさい はだかぼうまつり)」をはじめ、年間を通して多くの祭事・行事が行われています。
防府市まちの駅 うめてらす外観の写真

防府市まちの駅 うめてらす

防府市まちの駅 うめてらす内観の写真

防府ブランド・幸せますグッズなどが販売されています

麓にある「防府市まちの駅 うめてらす」では、防府天満宮にちなんだ品々をはじめ、防府市ならではのお土産が購入できるほか、食事や休憩スペースでゆったりとした時間を過ごすことができます。

今回体験した場所はこちら!

長州鋳物記念館の地図
体験料2,000円〜
住所防府市松崎町12-17
TEL0835-28-3702
FAX0835-28-3703
開館時間11時から16時まで ※完全予約制
定休日不定休
駐車場近隣駐車場を利用
アクセス山陽本線防府駅から徒歩で約15分