トップページ > 2021年12月24日 食レポ!! やまぐち
食レポ!! やまぐち

宇部市編 たちくま米工房

山口県の各地域の新しい食、気になる食をレポート!! 第19回は宇部市編です。
今回ご紹介するのは、宇部市厚東にある地産地消をテーマにしたスイーツ店「たちくま米工房」。厚東地域・立熊(たちくま)で採れた米を加工した米粉を使用し、グルテンフリーをモットーとしたシフォンケーキや餅を開発・販売しています。
それではさっそく「たちくま米工房」の誕生ストーリーや米粉スイーツの魅力を工房の皆さんに聞いてみましょう!
取材をするきらりんのイラスト
たちくま米工房の看板の写真

県道37号線を宇部から美祢へ向かって走ると現れるかわいい看板。奥のハウスは商品の引き渡し場所

工房の外観の写真

工房は代表者さんの自宅の離れを改装して活用。立熊の自然が見渡せる高台に位置します

 
米粉を使ったスイーツ作りを思い立ったのはなぜでしょう?
もともと趣味でシフォンケーキ作りをしていたのですが、現在のメンバーの一人が「何かに使えない?」と立熊産の米で作った米粉を分けてくれたんです。それがきっかけで「米粉スイーツ」として作り始めました。
 
趣味から始まって現在に至るのですね。工房立ち上げのグループを結成するきっかけは何だったのですか?
東日本大震災の時に何か支援をと思い、米粉のシフォンケーキを売ってその売上を被災地に寄付したんです。それがきっかけでシフォンケーキが広まり、「このケーキを使って何かできたらいいね」と声が上がるようになりました。立熊地区や宇部市の素材にこだわったシフォンケーキですから、本格的に製造・販売できれば、立熊の米や厚東産の卵、季節の野菜やフルーツを知ってもらえるし、地域のPRもできる、さらに、みんなで取り組むことで地域の活性化にもつながると思い、グループを結成することにしました。
メンバー集めはどうされたのですか? 話を聞き付けた人の立候補でしょうか
いえいえ、ご近所を見渡してやってくれそうな人たちに私から声を掛けました(笑)。皆さん、仕事や家事があるにも関わらず、快く引き受けてくださいました。それぞれの旦那さんもメンバーに加わってくれ、重いものを運ぶ時やイベント時には力仕事要員として頑張ってくれています。工房はメンバーの一人の自宅横にある空き家を改装して活用しています。冷蔵庫やオーブンなど機器の手配は、当時の地域おこし協力隊の隊員が手伝ってくれました。いわば地域みんなで作った工房なんです。
たちくま米工房のメンバーの写真

現在のメンバーは女性6人、男性5人。皆さんご近所にお住まいで、仕事や家事の合間に活動中

製粉機を使って米粉に加工する様子の写真

立熊産の米を工房内の製粉機を使って米粉に加工。さらさらふんわりのきめ細かさが特徴です

なるほど。そんな経緯で「たちくま米工房」は誕生したのですね。地域の素材を使い、地域の皆さんによって作られた工房でできたスイーツ、聞いただけでワクワクします。では、シフォンケーキからいただきますね。これはオリジナル商品となるプレーンですね…。
プレーン、ショコラ、ブルーベリー、紅茶の4種類のシフォンケーキの写真

この日のシフォンケーキは、プレーン、ショコラ、ブルーベリー、紅茶の4種類。

ホイップクリームやフルーツをトッピングしたシフォンケーキの写真

ホール、カットのほか、ホイップクリームやフルーツをトッピングして販売することも。

あれっ!? 小麦粉を使用したシフォンケーキと変わらないくらいフワッフワです! 米粉を使うと生地が重くなるイメージがあったのですが、これはとっても軽い食感です。素材を明かさない限り、誰も米粉だとは気付かないのではないでしょうか?
完成させるまでに何度も何度も試作を重ねました。材料の配合を変えたり、時間や温度を調節したり…。ようやくたどり着いた納得の食感なんですよ。でも、同じ配合で同じように焼いても、同じ味、同じ食感にならないことがほとんどですから、毎回微妙な調整が必要です。スイーツ作りというより、研究に近いかもしれません。ですから、私たちも感覚が磨かれ、今では米粉をふるいにかけた段階で「あれ? ちょっと違うな」と気付けるようになりました。
それはすごい…。この味、この食感、これは小麦アレルギーの方にぜひおすすめしたいです! 甘さもちょうどいいですね。やさしいというか、やわらかい甘みです。
米粉と相性がいいという、まろやかな甘みのきび砂糖を使い、子どもからご年配の方まで幅広い世代に楽しんでもらえる程よい甘みを目指しています。さらに、保存料も添加物も一切使わないので、安心して食べていただけます。だからこそ「たちくま米工房」は予約制とし、作り置きはしていません。その時々で必要なだけの材料を仕入れ、必要なだけの数を作っています。もちろん、シフォンケーキ以外のスイーツも全てそうしています。
プレーンとヨモギの玄米餅の写真

自家製の発芽玄米で作った玄米餅(プレーンとヨモギ)。ヨモギは工房付近で手摘みしたもの

桜餅の写真

大好評の桜餅。塩漬けの葉もお手製で、メンバーのお孫さんが生まれた時の記念樹の葉を使うそう

次はこちらのお餅をいただきますね。表面にお米のつぶつぶが残っています。これは玄米ですか?
ゆっくり発芽させた玄米を使っています。お祭りなどで手軽に食べてほしいと開発しました。緑の方はよもぎ餅です。ヨモギはこの周辺に自生しているものをメンバーみんなで手摘みしたものです。ふんわりと香るヨモギがいいと、こちらも人気商品になっています。玄米餅もよもぎ餅も立熊産のもち米を使っていますよ。
玄米餅の方はあんことの相性がバッチリで素朴なおいしさです。玄米の食感も面白い! よもぎ餅はなるほど、口の中にふんわりとヨモギの香りが広がりますね。これが立熊の自然の味なんですね。
次はこの桜餅を…。この塩漬けの葉は、とても風味がいいですね。
塩漬けの葉も私たちの手作りです。しかも、その葉はメンバーのお孫さんが生まれた時に植えた記念樹の桜から摘んだものです。私が偶然立派な桜の木を2本見つけて「あの桜の葉っぱを使っていい?」と聞いたところ、なんと記念樹だったんです。だから私たちにとってこの桜餅はとても思い入れがあるんですね。縁起がいいと言いますか、成長を祝うと言いますか。とにかく愛情がたっぷりと込められています。
宇部市内のイベントやバザーに出店している様子の写真

宇部市内のイベントやバザーに出店

竹灯籠イベントの様子の写真

立熊地区を盛り上げるために実施した竹灯籠イベント

今日はシフォンケーキ、玄米餅、よもぎ餅、桜餅をいただきましたが、そのほかにも作っていらっしゃるんですよね?
ロールケーキやプリン、小さいマドレーヌも作っています。シフォンケーキやロールケーキはホールで販売したり、カットして小分け包装にしたり、生クリームやフルーツなどをトッピングしたりと、できる限りご要望にお応えした形でお届けしています。現在の目玉商品は実はプチマドレーヌなんですよ。もっともっと手軽に食べてもらおうと思って開発した商品なんです。本日はご用意できなくてごめんなさい。あと、改良を加えてさらにおいしくなったプリンも人気上昇中です。
おっと! それはまた食べに来なければいけませんね! しっかりと予約させていただきます。
「たちくま米工房」の皆さんは、地域を盛り上げるために「竹灯篭」のイベントを実施されていたと聞いています。
「たちくま夢広場」で開催した「たちくま竹灯篭ナイトクリスマス」のことですね! こちらも立熊の自然資源を活かしたもので、うちのメンバーの男性陣が中心となって実施しました。地域の皆さんに楽しんでもらうだけでなく、地域外の人が遊びに来るきっかけになるようにと行ったのですが、今はコロナ禍のため控えています。「今年はやらないの?」とたくさんの人に言っていただくのですが、私たちも60代、70代となり、体力的にも難しくなっています。山に入って竹を選び、伐採して持ち帰り、それを灯篭に加工するので結構な重労働なんです。
「たちくま米工房」も竹灯篭イベントも若い人たちに受け継いでもらって、ずっとずっと長く続いていったらいいなと思っていますが、現実は厳しく、なかなか後継者が見つかりません。今は体力がある限り継続し、もし、いい人が現れたら継いでもらいたいという気持ちで頑張っています。
おいしい「お米スイーツ」を食べて、私もすっかり「たちくま米工房」のファンになりました! ぜひぜひ長く続けていってほしいです。たくさん食べて応援しますね!
皆さん、本日はありがとうございました!

【取材を終えて…】

「米粉を使って何かできない?」、この一言で始まった「たちくま米工房」。今は立熊産の素材にこだわったおいしい米粉スイーツを提供するだけでなく、地域の活性化のために活動を展開する社会的意義の大きいグループに育っています。メンバーの皆さんのお話から「宇部を、立熊を盛り上げたい!」という気持ちが十分に伝わってきました。
余談ですが、「たちくま米工房」のラベルや看板に描かれているクマのキャラクターは、メンバーの息子さんが考案されたそうです。そして、持ち帰り用の紙袋に押されたクマのスタンプは、近所の奥さんが作ってくださった消しゴムハンコだそう。「私たちはいろんなご縁に助けられているんです」と皆さん。そのご縁がずっとずっと紡がれていくことを願います。